セルフパワーUSB延長器を搭載 (端子を照らす赤の照明は5V給電中を示す)

 USB(Universal Sirial Bus)は、高速シリアル通信のバス規格で、現在、パーソナルコンピュータの周辺機器の接続用インタフェースの中で最も普及しています。キーボードやマウスはもちろん、ハードディスクや最近はディスプレイさえも繋がるようです。X68000のシリーズでは最後まで採用されることなく、シリーズ発売終了後に同人サークルから生まれた拡張ボード「ネレイド」を搭載することで始めて使用可能となりました。

ネレイドのUSB端子

USB端子

 拡張ボード、ネレイドのUSB端子の仕様は、

    ・規格    USB1.1
    ・転送速度 最大12Mbps
    ・電力供給 最大0.5A

で、その活用については、「X68-USBプロジェクト」の中でドライバの開発や改良、接続実験が行われ、マウスやジョイパッド、3.5インチFDDの読み込みなどの動作が確認されています。ただ、端子があるのが筐体背面で、それもひとつしかない、バスパワーが小さいなど、使い勝手があまりいいとは言えません。

 そこで、セルフパワーUSBハブを利用します。理想的には、複数のUSB機器が同時に接続できるといいのですが、残念ながらUSBハブのドライバが未だないようですので、ハブを改造して5V電源端子3個付きのUSBセルフパワー延長器なるものを作り、X68000の前面、両タワー間の隙間に設置しました。




USBハブの改造

 

USBハブ U2H-TZ420S
(エレコムのサイトより引用)
 左が改造の元になったハブ、エレコムのU2H-TZ420Sです。プラスチックのケースにコネクタが4個とセルフパワー電源のスイッチ、パイロットLEDがついており、付属品として2AのACアダプタが付いています。USBハブのU2H-TZシリーズはケースの幅が20mmで、ちょうどX68000の両タワー間の隙間に収まります。シリーズの中からセルフパワーの仕様のこれを選びましたが、さっそく困ったのは、ACアダプタのソケットがケース背面でなくケースの側面にあり、タワー間に立てるとソケットをふさいでしまうこと、また、あくまで1:1の延長器なので基板を取り出してUSB端子のひとつに直接ケーブルを半田付けする必要がありますが、ケースの表側と裏側が堅く接着されていて、なかなかはずれなかったことです。結局、プラスチックケースの裏側(写真の下半分)をむりやりニッパーで砕いて基板を取り出し、改造しました。

 以下の写真が、取り出した基板の改造の様子です。ケーブルが4つの端子への中継を行うチップに接続されていますので、まずそのチップの基板を外し、次にACアダプタのソケットを基板裏側に移動して背面から給電できるようにしました。また、ケーブルの根元にあって延長器を垂直に立てて使うと隠れてしまうパイロットLEDをACアダプタのソケットがもともとあった隙間に移動して、電源端子となるコネクタを裏から照らすようにしました。最後に、USBコネクタのひとつにケーブルの信号線(緑、白)、GND線(黒)を半田付けします。ネレイドからの給電はしないので電源+5V線(赤)は接続しません。


ケースとスイッチを外したところ
(ACアダプタソケットは側面に、LEDは下面にある)
ACアダプタのソケットの基板裏側への移動 LEDの移動とケーブル接続


 USB延長器のケースは前面側のみで裏はむき出しのままです。ACアダプタのプラグをソケットに接続し、インタフェースへのケーブルらをX68000のタワー間のすきまのトンネルを通した後、延長器を両面テープで固定しました。さらに、左タワーの背面のGND端子を外し、ACアダプタを補助コンセントに差し込んで改造作業は完了です。USB端子が前面に来て、X68000本体をラックに収めても簡単にUSB機器のケーブルを差し替えて動作テストを行えるようになりました。なお、USB延長器の上面の電源コネクタはさっそくとある用途に使うべく背面からのUSBケーブルを接続しております。その話は次回で・・・

できあがったUSB延長器
(一番左のみUSB端子として有効、他は電源端子)
USB延長器の取り付け
(左右側面、底面に両面テープを接着)
ACアダプタの取り付け
(干渉するGND端子は取りはずした)


USBマウスの動作試験

 
 ぷらすちっく、あく蔵両氏制作のフリーウェア USB-JOYPAD&マウス ドライバ [usbjoy.x ver.1.3e] を組み込むことで、USB端子に接続したマウスを使用することができました。 コマンドラインから以下のように入力するとドライバが常駐します。

usbjoy.x

 もう一度実行すると常駐解除されます。Windowsでドライバが不要なものは基本的に使えるようで、ドライバの常駐中はX68000のマウスは使用不可能になります。

 なお、ワイヤレスマウスでは、ロジクールのMX-1000の動作報告を見たことがありますが、最近購入した同じくロジクールのM235は「Full Speed Device Detected. 対象外のデバイスが接続されています。」が表示され、使えませんでした。( これのディスクリプタを得るため、立花えり子氏作のフリーウェア Nereid用 USBモニタ [ USBMON.x 0.52] を使ってみましたが、SIGBUSエラーが出て結果出力が途中で中断しました。)


USB-FDDの動作試験

 
 USB-FDDを使用する場合は、立花えり子氏作のフリーウェア Nereid用 USB 基本ドライバ [ USBd.x Ver0.03 ] 、および、想田電子工業作のフリーウェア USB-FDD ドライバ [ usbfdd.sys Ver0.03 ] を組み込みます。これらをディレクトリ\usbdrvに入れて、以下のようにconfig.sysに追記する(susie.xの記述の前に)とのことですので、試してみました。

DEVICE=\usbdrv\usbd.x
DEVICE=\usbdrv\usbfdd.sys

 接続したのは、写真の(株)デジナビが販売するUSB-FDD-01です。消費電流500mA以下とありますバスパワー動作ですが、延長器の供給電流は2Aまで可ですので、安心して接続できます。で、試験の結果ですが、USBd.xを読み込んだときに、「USBデバイスが見つかりませんでした」が表示され、usbfdd.sysを読み込んだところでハングアップしました。目下、原因究明中ですが、やはりドライブが対応のタイプでないのがいけないようです。ちなみに、usbfdd.sysのVer0.03がLogitec製 LFD-31UJ用、 Ver0.04aがY-E DATA 系ドライブ対応とのことですが、どちらもだめでした。



 
 その後、Logitec製 LFD-31UJを入手し、USBd.x Ver0.03.01(ネレイドの第二次以降配布基板用)とusbfdd.sysのVer0.03で試したところ、無事、デバイスディスクリプタが表示され、Windowsで書き込んだサンプルファイルの内容表示もできました。(写真参照)

 デジナビのUSB-FDD-01については、USBd.x Ver0.03.01を使うことで、同様にデバイスのディスクリプタは表示されましたが、usbfdd.sysを読み込んだところでハングアップします。ここは、やはり対応機種でないとだめなようです。


 使用上の注意ですが、FDDがUSB端子に接続されていなかったり、3.5インチFDがドライブに挿入されていないと、起動時のusbfdd.sysの読み込み後、固まりますので、FDDを使用しないときはCONFIG.SYSを切り替える必要があります。また、フリーソフトのX68000への受け渡しに利用しましたが、サブディレクトリの中のファイルの読み込みはうまくできないようです。


電源端子として

 
 USBコネクタの下2つは、5V電源端子で、スイッチで電源の入り切りができます。

 iPadの充電をしているところです。





  おわりに

 USBを何とかしようと思って、エレコムのUSBハブを購入したのは実は今年の3月末でした。実にこの改造完了まで9ヶ月費やしたことになります。振り返れば、たいした作業をしたわけではありませんが、ハブのケースが頑丈でこれを開くのに難儀したこと、ACアダプタとの接続中継の模索、ハブの中のLSIチップの制御がネックでハブとして機能させられないことがわかってやる気がなえたことなどが時間がかかった要因です。試行錯誤の中、別のハブをいくつか購入して方法を再検討したこともありましたが、結局、思い切って、堅いケースをニッパで砕くことにし(あと戻りできない)、また、ハブとして利用することを諦めて単なる延長器にし、余ったUSB端子は充電端子やちまたあふれるUSBグッズの電源として使うことに割り切ってからは、作業が進み現在に至りました。実用性はさておき、またおもしろい工作ができたと自己満足しています。

 かって、USBハブの研究レポートを立花えり子氏のサイトで読んだことがあります。X68000用のドライバ実装までなかなか道が険しそうですが、USB技術の習得に向けて自分でも取り組んでみたいと思います。また、フリーウェアとしてはまだ公開されていない、USBメモリのドライバもぜひ作ってみたいものです。しかし、それを行うには、忘れかけているマシン語の開発環境再整備とプログラミングノウハウを再学習しなければなりません。X68000改造ネタもまだいくつか残す中、いつやれるのかなぁとため息をつくことしきり。たくさん時間が欲しい・・・


改造にあたり、とても参考になったサイト

「X68-USBプロジェクト」  X-PowerStation Download ページ   
USBJOY.X開発者plasticさんのX68000関連ページ
桑島技研のNereidのページ