USB(Universal Serial Bus)はパソコン、スマートフォン、デジカメなどの情報機器、周辺機器の間でデータを転送するための接続規格である。データ転送の実効速度はUSB2.0で
300Mbps、USB3.0で1Gbps程度であり、USBホストとUSBデバイスとの間でパケットを交換する。下図はその信号波形の例で、信号がHからL、LからHへ変化したときは0、信号がHでもLでも変化していない場合は1を表すNRZI(Non Return to Zero Inversion)方式で符号化して通信が行われている。信号「D+」と「D-」は差動出力で両者の波形は上下反転となる。
USB2.0 Type A オス
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SOFパケットの「D+」信号の例(サイトUSBより引用) |
1 Chromecastへの給電とシフトゲートパネルUSB端子への接続
- ChromecastはダウンロードしたコンテンツをHDMI出力するが、その電源をマイクロUSBから供給する。カーナビ MDV-M907HDL にはUSBコネクタケーブルが本体から2本伸びており、iPod(iPhone)またはUSBメモリを同時接続でき、それぞれに格納した音楽や動画を再生できる。
まずは、1本のUSBケーブルに「USB電源分岐ケーブル」を使って電源のみを分岐し、Chromecastへ給電しながら、あらたに交換設置したシフトゲートパネルUSB端子裏側に直接接続して、USBメモリ等を使用できるようにした。また、Chromecast給電側には、簡単にChromecastの電源のOn/OFFが行えるよう、スイッチケーブルを入れた。以下がその接続の様子である。
分岐したUSBケーブルの接続先のUSB端子・リングライト付きシフトゲートパネルはサードパーティ販売(取付説明書なし、中華製と思われる)で、パネル色は白と黒とで選ぶことができ、みんカラなどではこれを機会にパネルを黒に変える方が多いようだが、コクピットが暗くなるのが嫌なので私はあえて元々と同じ白色のものを選んだ。USB端子窓がきれいに空けてあり、純正っぽく見える。
USB端子、リングライト付きシフトゲートパネル |
シフトゲートパネル裏側 |
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調達したシフトゲートパネル裏側にはスマホ充電対応の電源回路基板があり、基板上の中華製のDC-DCコンバータIC HXG1304G の出力が2つのUSB端子へと接続されていた。一方の端子をカーナビからの延長用とするため、まずは端子に繋がる配線を全て切断すべく基板のパターンカット、カット部迂回の配線追加を行った。次に新規購入した極細USBケーブルを2つに切断し、ケーブルの被覆を切って4本の芯線を取り出し端子裏側にハンダ付けした。
12→5V DC-DCコンバータ HX1304G-AGC |
USB端子1へのケーブル接続 |
極細USBケーブル |
ケーブルの基板ハンダ付け |
ケーブルの基板ハンダ付け |
さて、ここで、充電用USB端子なのになぜ信号線D+、D-へ配線がなされているだろうかと疑問を持つ方がいらっしゃるかもしれない。私もパターンカットしながら疑問に感じていた。充電のための端子なので5VとGNDのみしか繋がっていないだろうと思っていた。しかもUSB1とUSB2とでこのデータ端子への接続が違う。また、パターンカット前に一応、回路パターンの追跡と合わせ端子の電圧確認をしたのだが、USB2の方、確かに抵抗器による分圧回路があるのに、D-は2V、D+は0Vだった。電源の5Vは出ているので充電はできるのだろうが、何かしっくりこないので調べてみて、私は初めてUSB充電器の技術の奥深さを知った。下の表を見てほしい。
引用元 http://www.mobile-diary.net/2018/04/13/充電器の基礎(3)
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まず、わかったのは、スマホはAndroid、iPhone共充電されながら自身への充電電流を制御しており、特に大きな容量を持つ電源からはできるだけ電流を流して急速充電できるようにしていることだ。そして、充電器がどれくらい容量を持っているのかをUSBの信号線D+、D-の状況からスマホが充電開始時に調べているのだ。表のようにAndroid機ではD+、D-が短絡されていれば1.5A、iPhoneのApple10Wモードすなわち、D-=2.0V、D+=2.7Vであれば2.1Aまで流せる充電器と判断しその電流から充電を開始し徐々に減らしていくのだ。なお。これら条件を満たさない(そもそも粗悪USB充電ケーブルで信号線が繋がっていない)場合は1.0Aから充電を開始するということだ。
そして、シフトゲートパネルのUSB2端子は基板上のチップ抵抗の組み合わせから、Apple10Wモードに設定されていたことがわかる。D+が0Vだったのは回路の43kΩの不良が原因とわかり、抵抗器が大きく不格好にはなったが、近似値の手持ち部品で修理して規定の電圧がほぼ出るようになった。この充電回路、最初から急速充電に一部難がある不良品だったことになるが、仕様を明記した説明書がない以上、充電はできるので返品は難しいだろう。基板の一部が車両側との接触を避けるためかカットされていたが、その加工の杜撰さも含めこれが中華品質の現状なのだろうか。
USB2端子のD+、D-回路の修理と電圧実測結果 |
抵抗接続の補修 手持ちの関係で47kと(50k+5k)で分圧 |
基板の加工や補修が終わり、リングライトの電源と合わせ、4Pコネクタに配線をまとめた。また、リングライトはそのままでは明るすぎるので、エーモンの調光ユニットを通し電源を供給するようにした。
シフトゲートパネル裏側の配線 | LED調光ユニット接続 |
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さっそくパネルを交換である。スイッチ類のハーネスがとても短く作業は難儀だったが、無事USBメモリの音楽再生やiPhoneの充電ができた。リングも調光ユニットのスイッチ押しで10段階の明るさで光ってくれた。
パネルの交換、取付けの様子 |
動作確認 |
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