三菱電機 NR-MZ200と専用HUDを追加


 ナビをKenwood MDV-M907HDL へ交換することで、オーディオビジュアル的にはとても充実するものになったが、TurnByTurnを見やすく表示するHUDやスマホレスでルート探索可能な音声認識、ハト時計時報など失ったものは少なくなく、なんとか前機種のNR-MZ200も一緒に取り付けできないか考え、2ヶ月の試行錯誤を経てなんとか実現した。


1 追加ナビNR-MZ200の主な特徴  あらためて掲載(グレー文字の機能は今回は使用しない)


NR-MZ200
 ・クアッドコアCPU搭載SoC ルネサス「R-Car H1」を採用
 ・高音質、高画質
 ・スマホライクな操作性
 ・自律型音声認識機能(スマホ不要)
 ・AM、FM、地デジTV放送受信
 ・CD、DVD、USBメモリ、IPod、SDカード内の音楽・動画再生
 ・AUX(アナログ映像)、HDMI入力可
 ・ETC2、専用HUD接続可
 ・Bluetooth通信機能有り、赤外線リモコン使用可
 ・Wi-Fi接続によるパイオニアのSMART LOOP利用可(無料)


2 追加部分の接続図
 2つのナビで機能を分担させ、主にMDV-M907HDLは音楽・映像を担当、その音声をフロントスピーカに出力させ、NR-MZ200は主に地図表示とナビゲーションを担当、その案内音声をリアスピーカに出力させることにした。また、NR-MZ200のディスプレイにHDMIを用いてiPhone等の映像を表示させることができるようにし、また、M907HDLの音楽出力信号をMZ200のAUX-INに接続してリア側にも音楽を流せるようにし、後席の人から音楽をしっかり聴きたいとの要望にも応じられるようにした。



3 実装
 MZ200取り付けの最大の課題は設置場所の選定であった。標準のオーディオ用スペースはKenwood機で埋まっているので、どこかにMZ200の2DINスペースを確保する必要がある。

 最初に考えたのは前席の間にあるセンターコンソールのトレイ部分である。表示パネルがかなり低くなるが、シフトゲートパネルの下にうまく収まればすっきりする。トレイの上に置くには高さが足りず、また、トレイの奥に行くほど幅が狭くなり、トレイの土台ごとカッティングするなどかなりの加工が必要になる。試作用に入手したセンターコンソールパーツを加工しながら、実装の具合を検討したが、奥行きがさほど取れないので、どうしてもシフトパネルよりは前にせり出し、さらにあまり低くもできないので、シフトレバー操作に干渉する。このプランは没とした。
 次に考えたのはセンターコンソールのボックスである。表示パネルを上向きにして中に入れ、操作するときは蓋を開けて行う、操作しにくいならチルト機能のおかげでディスプレイ部は取り外しできそうなので蓋の裏側につけてもいいなとアイディアを膨らませた。小物入れをなくすことになるが、センターコンソールの他の部分を加工することなく、さりげなく追加ナビを実装できそうだ。
 懸念したCDの垂直出し入れも問題なくできることを確認し、さっそく取り付け用の穴を空けたり、固定具を準備したが、電源配線関連でMZ200の取り付けマニュアルを改めて見たときに、ジャイロセンサの関係か設置姿勢を水平から30度以内にすることとあるのに気が付き、オーディオとしてではなくナビとして利用する以上看過できない事項だとして幅が狭く水平設置ができないボックス内への実装を断念した。

 次のプランはセンターコンソールのドリンクホルダ部分への設置である。2つのドリンクホルダを失い、また、見た目も損なうことになるが、もうここしかない。なんとか2DINの幅180cmがナビの奥行き分は確保できそうなので、最終的にここに置くことに決定し、コの字アングル2本で土台を組み、ワゴンR用のブラケットを入手して超低頭ねじで固定、表示パネルを切り離して本体を取り付けた。

ブラケットとアングル

使用した M8 超低頭ボルト

本体の設置

 さて、表示パネルは本体とは下画像のように50ピンのFFC(フラットフレキシブルケーブル)で接続されている。表示パネルが見やすい場所までFFC を延長するため、それの接続コネクタにアクセスできるよう本体を分解した。さらに、DVDドライブを外して基板を見回し、表示パネル開閉時にアームを繰り出すモータのコネクタを探したが、それらしいものは見つからなかった。


表示パネル接続部

表示パネル、本体前面カバーはずし

さらに、分解
DVDドライブもはずしたところ

 表示パネルへはRGBカラー画像のほか、タッチパネルや押しボタンスイッチ、マイク、赤外線リモコンの受光窓の信号が通っているので、これらがどのくらいの延長に耐えうるか心配だった。 無理かもしれないと思いつつ、これまでレーダ探知機を設置していたステアリングの裏側に表示パネルを置き、延長FFCで接続してみた。長いFFCの調達が難しかったので、延長用基板と30cmもの3本、50cmもの1本を使って、計140cmの延長ケーブルとしたが、動作に問題がないことがわかったので、保護のため、ホームセンターで入手した黒い熱収縮チューブで覆ってステアリング裏まで張り巡らした。下図はその様子である。


本体とFFCの延長

FFCと基板の保護

ステアリング裏に表示パネル取り付け


 なお、本体設置位置については、2DINの幅の確保のほかに留意する点がある。それは、表示パネルオープン時にチルト機構のアーム繰り出しが十分動作できるスペースを確保することだ。狭いと繰り出したアームが何かに接触した時点で繰り出しをやめて少し後退する。この状態でDVDを再生しようとするとデバイスエラーの旨を表示して再生してくれないのだ。本当はアームの動きを止めたかったのだが、無理そうなので、アームの先端がコンソールの固定部などに接触しないよう位置決めをした。


4 配線とiPhone設置
 GPSやHUD、オーディオ、車速パルス等の各種車両信号のほか、電源として、アクセサリ電源線、イルミネーション電源線、常時電源線の3本を接続した。車両信号や電源の前者2本はナビ裏から分岐して配線し、常時電源はヒューズホルダから取り出した。
 さらに、「Lightning-Digital AVアダプタ」を用いて常設iPhoneをHDMI、USB端子に接続し、iPhoneのミラーリング画像を表示できるようにした。




 iPhoneはコンソールボックス内に設置した。SIMなしであるが、モバイルルータのWi-Fi経由でインターネットに接続し、Bluetoothを通してKenwoodアプリがMDV-M907HDLに各種サービスをしながら(Bluetoothページ参照)、SIRIとの会話もサポートする。電源はNR-MZ200のUSB端子から得ている。



 また、以前使っていた赤外線を用いたステアリングスイッチアダプタを再調整し、クルコンやLDAのボタンを用いて主要操作ができるようにした。ステアリングスイッチアダプタは「たけっち工房」さんが開発されたもので、ステアリングホイールのコラムカバー内のスパイラルケーブルコネクタに取り付けることで、クルコンレバーの各操作によって抵抗値が変化するのをアダプタのPICマイコンが読み取ってどのボタンが押されたのかを判断し対応の赤外線コマンドを送出する。
 
 下図は赤外線リモコン系統図を示す。




各スイッチに登録したリモコンコマンド

クルコンレバー

LDA DIST
5 仕上げ
 仕上げとして、センターコンソールパネルを3つに分断し、まず、トレイ部分で本体裏側のケーブル類を覆い、その上はGoogleHomeの指定席とした。アクセサリ電源ソケットのあるパネルはドリンクホルダの穴が部分的に残っているので、それを隠すための蓋を自作し重ねてコンソールの手前側に設置した。アクセサリ電源には電圧表示付きのUSB電源アダプタをはめこんでWi-Fiルータの電源としている。また、MZ200本体の上には2mm厚の白色アクリル板を貼り、両側に元々のコンソールトレイのエッジ部分を接着した。全体として継ぎ接ぎのコンソールパネルとはなったが、アームレストに腕を置くと自然に触れるアクリル板のつるつるした感触が心地よく、フロントガラスから入り込む光が空模様をうっすらと映し出し、なかなか味わいのあるものになった。
 ステアリングの表示パネルは下にスポンジの土台を貼り付け、裏側に設置したネオジウム磁石板のスマホホルダ2つで固定した。

本体を覆うセンターコンソール

表示パネル


 なお、DVDは今回は使用を想定していないが、置いてあるだけのドリンクホルダ隠しの蓋パーツをはずせば地図更新の場合などでDVDの出し入れができることを確認した。




<2021/8/16追加>
 コンソールトレイ裏側、ドリンクホルダ付近についていた茶色のスマートキー検出アンテナをコンソールボックス付近に移設した。なお、画像の右側、白いケーブルはiPhoneミラーリング用に配線したLightningの延長、Digital AVアダプタである。


6 運用
 久しぶりにNR-MZ200にて音声認識によるルート探索をしてみた。目的地を話すことで候補が3つ表示され、読み上げが始まる。この機種の特徴であるバージイン発話機能により音声案内中でも認識をしてくれ候補選びから案内開始まで発話のみで指示できる。Kenwood機はスマホ利用の目的地選び以降は手操作が必要なのでこの点はMZ200に軍配が上がる。

 さて、iPhone画面が表示できるようになったので、アプリ画面を映してみた。以下がその様子である。 「CarscopePlus」はOBD2コネクタで取れるECU情報をBluetoothで配信するアダプタ、HKSのOB-LINK TYPE-001用のアプリでそのデモ画面を表示させた。アダプタの購入は未定である。ユピテルのレーダー探知機のようにハイブリッド特有のデータも表示されるなら乗り換えようかと思ったが・・・。2つ目の「星座表」は以前に興味を持って購入していたもので、現在位置、時刻で見える夜空の星を星座解説で補完するものである。3つ目はトヨタ自動車が3月末に「LINEカーナビ」に代わって公開を始めたばかりのカーナビアプリ「MoviLink」である。トヨタおなじみのきれいな音声で案内し、脇道アドバイスも出てなかなかよくできている。今後のさらなる改良・発展が楽しみである。


アプリ「CarscopePlus」

アプリ「星座表」

アプリ「MoviLink」
7 機能追加(フォトフレーム)
 フォトフレーム(静止画表示)機能はNR-MZ200やMDV-M907HDLにない。GoogleHomeとChromecastを利用するとGoogleフォトにアップした写真を順に表示してくれるが、BGMなし、事前アップ必要と使い勝手は今イチ。せっかくのディスプレイ追加なのでフォトフレームにもしてみた。Windows10標準アプリの「フォト」は静止画を組み合わせた動画作成が簡単にできるので、過去に撮影した写真を動画にしてSDカードに入れ、再生してみた。以下がその様子である。

Win10アプリ「フォト」

フォトフレーム動作