BluetoothはIEEE 802.15.1規格準拠の近距離無線通信である。2.4GHz帯の電波を利用し、10m程度の範囲にある機器を相互に結び(ペアリング)、デジタル通信を行う。Wi-Fiに比べ消費電力が少なく、小さな電子機器にも容易に実装できる。帯域幅1MHzのチャンネルが79あり、混信が生じても空いているチャンネルに自動的に周波数ホッピングし、通信を継続する。


GFSK(ガウス型周波数偏移)変調方式 周波数ホッピング 79ch

1 ハンズフリー通話とSIRIとの会話


 MDV-M907HDLでは、Bluetoothによるハンズフリー通話のための携帯電話を2台同時に待ち受けできる。私はこれまで通話の方はガラケーを愛用してきたが、最近ガラホ(4Gケータイ)に機種変更した。一方、iPhoneも登録し待ち受け状態にしておくと、ナビパネルの右下にある[MAP/AV]ボタンの長押しでSIRIを呼び出して天気や現在地を聞いたりiPhone内の音楽再生指示ができたりする。MZ200の時代にはこれのために「Siriリモコン」なるもの(PIP-SRC)をステアリング下部に貼り付けて利用していたが、これが不要となった。ただ、ハンズフリー待ち受けには優先順位があって、iPhoneを優先にしておかないとSIRIを呼び出せない(最初SIRIを呼び出せたのに急にだめになったことがあったが、これの設定が原因だった)。

SIRI呼び出し時の画面
 SIRI利用にはインターネット接続が必要となるが、車内にはモバイルルータによるWi-Fi環境があるのでそれを利用している。左図は動画再生中にSIRIを呼び出したときの様子である。「認識中・・・お話ください。」とあるが、実際にはiPhoneからの促し音が出てから認識が始まる。
 なお、「Siriリモコン」によるiPhone6の呼び出し反応はすこぶる悪かったが、MDV-M907HDLからのSIRI直接呼び出しにはよく反応してくれる。



 AIとの会話はGoogleHomeとでもでき、あちらの方が賢く便利なのだが、いかんせんGPSがないためできなかった現在地を尋ねることがこちらではできる。このほか、いろいろと質問でき、GoogleHomeとは違った赴きで会話が楽しめるが、回答が運転中には見られないiPhoneの画面に振られることが多いのが残念である。

2 Bluetoothによる楽曲情報取得


 カーナビとBluetoothあるいはUSB接続されたiPhone上でKENWOODが提供するアプリ「Music Info.」を起動すると、インターネット上のGraceNoteデータベースを利用したCD楽曲情報を取得でき、曲のタイトルやアーティスト名を表示するようになる。
 なお、アプリ「Music Info.」の起動は手操作以外に、SIRIに「ミュージックインフォ」と話しかけるだけでも可能で、受け付けるとピピと応答音が鳴るので画面を見なくても起動したことを確認できる。逆に応答音なしで音声認識画面が消えたときはきちんと認識できていないので、再度SIRIを呼び出して話すことになる。


3 Bluetoothによる情報通信


 やはり、カーナビとBluetoothあるいはUSB接続されたiPhone上でKENWOODが提供するアプリ「Drive Info.」を起動すると、「開通予定道路」や「天気予報」、「ガソリンスタンドの価格」などが表示されるようになり、「フリーワード検索」も可能となる。ハンズフリーで「Drive Info.」を起動するには、やはりSIRIを呼び出し、「ドライブインフォ」と話せばよい。
 パイオニアと連携して得るリアルタイムの渋滞情報スマートループは三菱のMZ200では無料で取得できたが、M907HDLではアプリから課金しないと利用できない。


4 Bluetooshテザリング    ※2021/5 「MapFanクラブ」脱退に付きテザリング利用は停止(以下は参考まで)

 MDV-M907HDLをBluetooshテザリングでインターネット接続すると、先の「Drive Info.」の起動なしで天気予報情報やスマートループ渋滞情報などを取得できるようになる。Bluetoothteテザリングを利用するには、KENWOODがサポートする有料会員制の「MapFanクラブ」に加入する必要があり、M907新規購入時にはその無料加入権が1年分ついていたので、さっそく加入手続きした。

Aterm MR04LN
 さらに、Bluetoothテザリングを謳いカーナビ接続の方法もマニュアルに記しているWi-Fiルータ、NEC Aterm MR04LNの中古を入手した。しかし、これは結局、失敗だった。このルータ、以下の特徴があり、
  • 高速Wi-Fi「11ac」対応
  • SIMロックフリー
  • デュアルSIM対応
  • タッチパネル式ディスプレイを搭載
  • Bluetooshテザリング可能(iPhone、Android、カーナビ)
仕様上は、これまで使ってきた NETGEARのAirCard785 よりも優れた面がたくさんある。しかし、使ってみてわかったことだが、このルータとM907HDLとの間でペアリングができない。ペアリングは先に電波を出しておく親機とそれを拾って接続する子機との間で行われるが、このルータとM907HDLのどちらもペアリング親機としてしか動作しないのだ。ちなみに、iPhoneやAndroidのスマホは親機にも子機にもなれ、このルータとスマホ、スマホとM907HDLとの間ではペアリングが成立する。また、パイオニアのBluetooth対応カーナビは親機、子機どちらにもなれるので、このルータでインターネット接続ができるようだ。
 さらに、AirCard785では可能だった電池なし運用ができないこともわかり、いくら機能面で優秀でもクルマのON/OFFに合わせ自動起動、自動終了ができないので、Wi-Fiルータのすげ替えにも至らずお蔵入りとした。


iPhoneによるテザリング
 結局、iPhoneにUSBケーブルを接続して車載専用として設置し、インターネット共有動作をさせることにした。iPhoneのインターネット共有はSIMによるモバイル通信からWi-fiやbluetoothのテザリングを行う。Wi-Fiの方は通信休止時などで接続が切れてしまうがBluetoothの方はずっと接続を継続してくれている。

 MapFan会員ということでやっとスマートループによる渋滞情報をリアルタイムに取得てきるようになった(有料のMapFan会員であってもアプリDriveInfo.のスマートループ課金は別に必要のようだ)。

 iPhoneがいいところは電源オフにしておいてもUSBからの給電開始でOSが起動し、一度設定したインターネット共有も自動的に有効となってくれることだ。さすがに、USB接続の電源オフで本体はオフにはならないので、電池消耗を防ぐため電源を手動で切っている。電源を切っておかないと、一晩で電池残量がゼロになり、翌朝充電がある程度できるまで起動してくれないのだ。クルマのエンジンオフで流れる「携帯電話を忘れていませんか」の音声メッセージが電源切り忘れ防止になってくれている。

 Android機でもBluetoothテザリングは可能で一度は手持ちの機体で試したが、USBからの給電開始でOSが自動起動せず、また、起動の度に手動でテザリング設定をしなければならなかったので、まずは見送りとした。Andoroid機ではもちろんSIRIの呼び出しはできないが、Wi-Fi接続からBluetoothテザリングができてSIMが不要なので、先の点が解決できれば再挑戦したい。理想的には、電池不要、USB電源のみで動作するWi-FiからBluetoothへの変換専用機があると嬉しい。