赤外線(Infra Red)は、可視光より波長が長い光である。テレビやエアコンなど家電製品のリモコンではLEDで発光させた900nmの近赤外線を38kHzで変調してそれを断続的に送信している。送信フォーマットはメーカーによっていくつか種類があるが、下図はその例である。カーナビ NR-MZ200 にも赤外線リモコンによる制御機能があり、それを利用した2つの試みを紹介する。



1 スマートリモコンの利用

 スマートリモコンはAIスピーカやラズパイ等からWi-Fi経由で指示を受けて赤外線コマンドを送出しテレビやエアコンを制御する。私は(株)SOCINNOのsREMO-Rを購入し、GoogleHomeMiniと連携させて音声によるカーナビの遠隔操作をさせてみた。音量の上げ下げのほか、ステアリングリモコンのスイッチからでは指示できないような地図の拡大/縮小、地図/AV画面切り替え、音楽ファイルのフォルダ移動などを音声で指示できるようにした。

 手順としては、まず、設定用アプリをiPhone等のスマホにダウンロードし、指示音声を文字で登録する。さらに、別途入手した三菱製カーナビ用のリモコンを使って該当赤外線パターンをsREMO-Rに記憶させる。設定が完了したら、「ねえ、グーグー、地図拡大オン」などと話しかけると、地図が詳細画面に切り替わる。運用時はスマホはなくてよい。以下の図は、その様子を示す。


設定した「お気入1」の
ボタン一覧(テスト用含む)

リモコンボタン「AV」の
ボタン名と色の設定 

AIスピーカデバイスの選択と
音声コマンドの登録
iPhoneアプリ「sRemo-R」の設定・登録の様子  デバイス名は「スリモ」とした



音声コマンドと赤外線パターンの登録


音声コマンドによるカーナビ制御




 当初、設定用アプリがiPhone4Sの画面表示の不具合を起こしていたが、sREMO-Rのメーカーに報告したら1日程度でバグをフィックスしてくれて早い対応に感激した(さすが日本のメーカー)。動作試験後、地図やフォルダ切り替えのためしばらく運用してみたが、「ねえ」から始まる言葉が長くてだんだんわずらわしくなり、また、話し方によっては反応しないことがあって、残念ながら常用には至らなかった。せめて、コマンド文言の後ろのON/OFFがなくてもよいようにならないかと思ったものだ。

 また、sREMO-RにはスマホのGPSを利用して、ある地域に到達したら赤外線コマンドを送出する機能があるので、これを利用して目的地に近くなったらカーナビの音楽の音量を下げるようにしてみた。ただ、このGPS対応機能はIOS12以降しか使えないとのことで、BluetoothページにあるようにSiriリモコンのため車載するIOS9のiPhone4Sでは機能しないので、こちらも常用は見送りとした。


目的地付近で音量制御



2 ステアリングリモコンの拡張
 カーナビの遠隔操作拡張のため、音声コマンドに代わって導入したのが、ステアリングスイッチアダプタである。ステアリングホイール上のスイッチを押すことであらかじめ登録した赤外線コマンドを発光するもので、いくつかのメーカーから発売されているが、クルコン(クルーズコントロール)のレバー利用に特化したアダプタがたけっち工房さんから販売されているのをヤフオクで見つけ注文した。

 アダプタを取り付けるスパイラルケーブルコネクタはステアリングホイールのコラムカバーを開けると現れる。14ピンのうち、1番2番ピンの間に抵抗切替回路が繋がっており、レバーの各操作によって抵抗値が変化するようになっている。これをアダプタ内の小型プロセッサであるPICが読み取ってどのスイッチが押されたかを判断し対応の赤外線コマンドを送出するしくみである。


     ステアリングコラムカバー内



50プリウス クルコン関連レバー&スイッチ接続図


 なお、標準のアダプタでは、これを接続してもオートクルーズ機能がちゃんと使えるよう、配線を一部カットしてモード切替スイッチを外付けする仕様となっていた。この配線カットをためらい、アダプタ製作元のたけっち工房さんと相談する中で、配線カットなしでカプラオンで接続してレバーの長押しでモード切り替えできるようにするとともに、あまり使わないLDAやDISTのスイッチもカーナビ操作の補助として使えるようにコネクタ配線の変更やプログラム追加をしていただいた。

 アダプタ基板はオーディオパネル内に組み込み、LEDケーブルをコンソールボックス内に這わせ、赤外線発光用LEDをアームレスト下のカーナビと対向する位置に設置した。以下はその動作の様子である。



 電源ON後にカーナビ操作とクルコン操作のどちらのモードにするかやモード切替はどのレバー操作の長押しとするかは細かく設定できる。MAINボタンを押しながら電源をONにするとこの設定ができるようになり、MAINを押すごとに設定ページが変わり、+RES(レバー上)で内容の順次変更、-SET(レバー下)で内容決定をしていく。

設定ページ設定情報内容
起動時モードナビ操作、クルコン、電源OFF時の状態のどれか
モード切替スイッチMAIN、+RES、-SET、CANCEL、DIST、LDAのどれか

 また、レバーやLDA、DISTのスイッチの各操作時に発光させる赤外線コマンドはそれぞれ純正赤外線リモコンで制御基板に学習させることができる。私は費用を抑えるため、古い型の三菱電機製カーナビ用リモコン RE-HZ2(NR-HZ001用3GATEリモコン)の中古を入手して設定に使用した。
 設定の際はまず-SET(レバー下へ)を押しながら電源をONにし、基板上のStatusLEDの点灯で学習モードになったことを確認する。次に、学習させたいレバーを押して離し、LED低速点滅中に純正赤外線リモコンから長押しで基板上の受光部に該当の赤外線を送る。LEDが点灯となったら、一度、純正リモコンからの赤外線を止め、その後のLED高速点滅中にもう一度同じ赤外線を長押しで送ると、LEDが2秒点灯して1つの学習が終わる。

 下表は設定作業により実現した各動作モードにおけるスイッチの役割の一覧である。動作モードはDISTスイッチの長押しで切り替えることにした。クルコンモードではOBDモニタの横に取り付けたモード表示LEDが青く点灯する。

スイッチ操作カーナビ操作モードクルコンモード
クルコン
レバー
MAINボタン押し地図画面表示オートクルーズ開始
上げる地図を広域に切替設定スピード増加
下げる地図を詳細に切替設定スピード減少
手前に引くAV画面表示オートクルーズ停止
LDAスイッチ押し音楽再生フォルダ
を1つ前に移動
車線逸脱警報
有効/無効切替
DISTスイッチ短押し音楽再生フォルダ
を次に移動
オートクルーズ時の
車間距離切替
DISTスイッチ長押しモード切替


クルコンレバー

LDA、DISTスイッチ

動作モード表示LED

 こちらは大変重宝し、おかげでカーナビの小さいボタンやタッチパネルをほとんど利用することなく、快適にカーナビを操作することができるようになった。