番外編
 X68030 コントロール基板(下部基板)修理報告


 趣味のひとつとして、Windowsパソコンの自作、拡張を重ねていく裏で、ただラックに鎮座しているだけになっていたシャープ製パソコンX68030は、いつのまにか音がスピーカから出なくなっていました(恥ずかしい話、スピーカが内蔵されていることを忘れ、Windowsパソコンのように、外部スピーカに接続するものだとも思い込んでいて、しばらく気がつかなかったです。実際、専用モニタを使っていた時はディスプレーケーブルを通してモニタから音も出ていましたし)。

 音の出なくなった原因ですが、筐体の台座部分に入っているコントロール基板(通称、下部基板)の電解コンデンサの劣化が考えられます。電解コンデンサは老朽化にともない電解液が漏れ出し、回路パターンを腐食したり、電気的短絡により他の部品を傷めることがあり、特にX68000の電源ユニットではそれにともなう故障が必ず発生すると報告されています。また、特にX68030のコントロール基板に使われた表面実装コンデンサも当時は優秀なパーツとして採用されたものの10年以上経過するとやはり電解液が漏れ、音が小さくなった、出なくなったということがよくあるようで、コンデンサの付け替えによって直ったとの報告も掲示板では見られます。

 今回、ラインアウトからは音声信号は出るもののスピーカからは全く音が出ないという状況を解消すべく、コントロール基板の修理にチャレンジしました。 実はこの機械、数年前に電源装置のコンデンサは取り替えを行っており、その時、X68030の表面実装コンデンサ等リフレッシュ部品セット(こちらのbabincho019)を入手していましたが、コントロール基板の外し方に戸惑い、また、それなりの道具等の準備も必要ということで、そのままおざなりになっていました。

 コントロール基板の補修にあたり、あらためてネットの情報で基板の外し方を調べ、また、以下の道具も買いそろえました。

 表面実装部品取り外しキット(サンハヤトSMD-21)とフラックスクリーナー、接点復活王

 表面実装部品取り外しキットは融点が低い特殊ハンダと専用フラックス、ハンダ吸取り網からなり、特殊ハンダを部品のハンダ付け部分で溶かすことで、こてをあてるのをやめてもしばらく固まらないので、部品を外しやすくなる。


 以下が、X68030の台座からはずした下部基板です。やはり、表面実装のコンデンサから漏れた電解液で、基板やその下のカバーが汚れていました。

X68030 下部基板補修前(表面) X68030 下部基板補修前(裏面)


 
 ちなみに、以下がX68000 EXPERT の下部基板です。こちらはリード線形のコンデンサが使われており、液漏れによる汚れはありませんでした。
X68000 EXPERT コントロール基板



12:10 2012/04/22
表面実装コンデンサ部分のアップ(埃とともに、基板や部品の汚れが見える)



 作業の第一歩として、まずは、表面実装部品取り外しキットでコンデンサをすべてはずしました。以下がその手順です。

  (1) 注射器を用いて、表面実装コンデンサの足下のハンダ付け部分2箇所に特殊フラックスを注入する。
  (2) 片方のハンダ付け部分をハンダごてで加熱しながら、特殊ハンダでハンダ付けする(溶かす)。
  (3) もう一方のハンダ付け部分も溶かしながら、コンデンサを横にずらし、取りはずす。


 次に、ハンダ吸取り網でランドに残った余分なハンダを取り除きます。そして、最後にフラックスクリーナ(スプレー)を吹きつけ、ウェスとブラシで電解液やフラックスを落とします。以下はその結果です。

表面実装コンデンサを取り外したところ 裏面 基板洗浄後


 次に、リフレッシュキットの新品コンデンサをハンダ付けします。足が横に短く出ているだけなので、難儀しましたが、なんとか極性と容量を確認しながら、取り付けました。

新コンデンサ取り付け後


 これで、スピーカから音が出るようになるか、わくわくしながらケースに収めてテストしました。しかし、まだ、音は出ません。コンデンサの足下を再加熱して補修し直しましたが、それでもだめです。試しに、スピーカを駆動しているアンプ(IC213 NJM2073)の電源端子(2番ピン)とGND(4番ピン)の電圧をテスターで測りました。この端子へは5V電源からLCによるノイズフィルタを通して、電源が供給されているはずですが、なんと、本来かかっているはずの5[V]の電圧がないではありませんか。

 そこで、電解液の腐食でパターンが切れているのかなと思い、回路を辿りました。そして、ノイズフィルタの100μH インダクタ(これも表面実装タイプ 黒色の直方体)が断線しているのに気がつきました。とりあえず、同様のインダクタで電源供給しているところから仮配線してテストしたところ、やっと音がスピーカから出るようになりました。

 次の日曜日、名古屋のパーツショップで100μH インダクタを買い求めました。交換には、インダクタンスの値はもちろん電流容量や直流抵抗も同じものが必要ですが、ショップには同じ表面実装タイプはなく、あるものの直流抵抗などの規格はわからないとのことでしたので、形状の異なる2種類のインダクタを購入して帰り、テスターで直流抵抗を測り、値の近い方を断線したインダクタの両端にハンダ付けしました。以下は、その補修部分です。


アンプと断線したインダクタ インダクタの補修後


 これで、音が出るようにはなりましたが、ライン出力同様、ADPCMの音はFM音源に比べ小さく感じます。ADPCMの増幅用オペアンプが弱っている可能性が考えられますが、このオペアンプ(面実装タイプ)の入手ができず、これの交換は断念しました。

 さて、音が出るようになって気になるのが、ADPCMの音声が切れるときに発生するプチノイズです。これを押さえるフリーソフト(nnpcmdrv.sys)がありましたので、それを以下のようにシステムに組み込んで対応できました。

device=nnpcmdrv.sys
CONFIG.SYS への追加記述

 こうして、手をかけてきたX68030ですが、X68000 EXPERTの改造資金獲得のため、手放してしまいました。新しいオーナーさんのもとでも、ずっと元気で働いてくれるのを祈っています。

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